マンションを貸す時の契約。「普通賃貸契約」と「定期賃貸契約」

<前の記事:大きく分けて二つのマンションの貸し方がある。「賃貸」と「サブリース」

マンションを賃貸として貸し出す時の契約には、「普通賃貸契約」と「定期賃貸契約」の二つの契約があります。マンションを貸し続けることが前提の場合には「普通賃貸契約」を選び、マンションを貸し出す期限が決まっている場合には「定期賃貸契約」を選びます。

契約の違いによりマンションを将来的に売れなくなってしまったり、借り手とのトラブルになる可能性もあるため、「普通賃貸契約」と「定期賃貸契約」の契約の違いを理解しておくことが重要です。

「普通賃貸契約」と「定期賃貸契約」の違い

普通賃貸契約では借り手側が契約を更新すると望む限り、基本的には契約が更新され続けます。借り手側の意思が優先されるため、将来的にそのマンションに住みたい場合やそのマンションを売りたい場合にも、借り手の契約更新を拒絶することはできません

定期賃貸契約は「いついつまでこのマンションを貸します」という期限を設ける契約です。借主にいつまで貸せるのかを事前の契約で明記し、トラブルを防ぐことができます。

具体的には借地借家法と呼ばれる賃貸の法律の第 27 条に以下のように記載されています。

第二十七条   建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

つまり、契約が終わる半年前に通知することにより、契約更新をせずに終了することができます。

他にも以下のような違いがあります。

  普通賃貸契約 定期賃貸契約
契約期間 1 年以上の契約期間必須 2 年契約が多い

期限を自由に設定できる。1年未満でも可

契約更新 借り手側が契約更新を望むと基本的にはそれを拒絶できない 最初に指定した期間でマンションを明け渡してもらえる
更新料 礼金を取る場合がある 更新料はなし

定期賃貸契約のメリット

定期賃貸契約の最も大きなメリットは賃貸に対して期限を設けることができるという点です。賃貸のリスクとして、空室が続き、家賃収入がなくなってしまうことがよく取り上げられます。しかし、空室にならないことも同等のリスクになりえます。
 
基本的に賃貸の契約では借り手側が優遇されています。マンションの借り手が契約を更新し、住み続けることを希望しているにも関わらず、立ち退いてもらうことは大変困難です。将来的にマンションを売りたいと思った場合にも、だれかが住んでいる場合には売りに出すことが難しくなります。出張などでしばらく不在となり、戻ってきたときに住みたいと考えていても、タイミングよく空室になるとは限りません。
 
こういった場合のため、定期賃貸契約では事前に期限を設定し、空室になる時期を指定することができます。
 
また、マンションを貸す時にはこれ以外にも、不良借家人が住みついてしまうリスクもあります。たとえ不良借家人であっても普通賃貸契約では追い出すことが難しくなってしまうので、あらかじめ期限を設定しておき、その期限以降は住めないようにするのも一つの手です。もちろん善良な借り手の場合には、双方が同意が同意している状況であれば定期賃貸契約でも再契約をすることで継続ができます。 

定期賃貸契約のデメリット

では、定期賃貸契約を選ばない理由とはどういったものがあるのでしょうか?
 
貸し手側からすると定期賃貸契約にした方が不良借家人にも制限をかけられ、立ち退きも指定できるため、全体的にリスクが少なくなるように感じられますが、借り手側としては期限が決められている事に不安を感じてしまいます。
 
例えば「不良借家人の排除のために定期賃貸契約を 2 年で設定」したとします。たとえ「借り手が善良であると判断されれば契約は更新できる」と事前に説明した場合にも、借り手側としては他の物件であれば確実に自分有利な状況ですので、あえて定期賃貸契約を借りる必要はありません
 
こういった不安要素があるため、一般的には定期賃貸契約では通常の賃貸より少し安くしないと借り手がつきにくいといわれています。「xx という期限がありますが、その分本来であればこの値段では借りられないような物件ですよ」という感じでお得感を出します。
 
これも、必ずしも他の物件より安くする必要があるわけではありません。定期賃貸契約でも礼金を設定することもできますし、他の物件と同等の値段で募集することができます。借り手側が納得すれば問題ありませんが、普通賃貸契約よりはハードルが高くなりがちです。

定期賃貸契約と普通賃貸契約。どちらを選ぶべきか?

戻る予定がない場合には普通賃貸契約の方が家賃収入を多く得ることができます。空室にしたい時期が決まっている場合には定期賃貸契約を結び、多少収入が減ったとしても、そのタイミングでトラブルなく明け渡してもらえることを優先した方がいいでしょう。
 
ここまでの内容の通り、例えそのマンションに戻る予定がなくても不良借家人への対処として定期賃貸契約を結ぶことはできます。確かに、貸し手としてはリスクが減るように見えますが、賃貸の場合には必ず借り手側がそれをどう捉えるのかということをしっかりと意識しましょう。リスクばかり意識しすぎて借り手が一切つかず、ずっと空室という状況だと意味がありません。
 
不良借家人に関しては不動産会社も困ることになるため、事前審査を厳しくすることもできます。また、保証会社との契約を必須にしている不動産会社もあります。信頼できる不動産会社であれば、普通賃貸契約でも不良借家人を可能な限り排除してくれ、また万が一そういった借り手が入ってしまった場合にも精一杯サポートしてくれます。
 
物件によっては審査基準や保証制度も変わってくるため、不動産会社としっかりと相談をしながら、その時の状況応じて臨機応変に対応していく必要はありますが、自身としても定期賃貸契約と普通賃貸契約の違いによるメリットやリスクについてしっかりと理解しておくことが重要です。
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